2012年3月27日火曜日

ドイツ軍装備大図鑑 -制服・兵器から日用品まで-:独破戦線:So-netブログ


ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

アグスティン・サイス著の「ドイツ軍装備大図鑑」を読破しました。

いやいや、なんですかね、この本・・。
偶然、ネットで見つけた去年の11月に原書房から出た大型本ですが、
318ページで定価はなんと、9450円!
先日も大きな本屋さんの軍事モノのコーナーに行って来たばかりですが、
こんなのは売っていなかったと思います。
しかし、値段が値段ですし、内容もイマイチ不明なことから図書館で調べてみると・・、
ありました。しかも「在架」・・。ニヤニヤしながら早速、図書館へ・・。
そして手に取ってみると、この大型本はオールカラーで当時の現物の写真集であるという
通常は洋書でしかありえない、スゴイ代物であることが判明しました。

原著は2008年、スペイン人のコレクターによるもので、「プロローグ」では、
「軍隊暮らしにおける所持品やその使い方を図版で生き生きと観察することで、
戦闘員の姿を身近に理解してもらうことにある」と執筆の目的を語ります。
ただ、出だしの「1930年までベルリン士官学校の校長を務めたクラウゼヴィッツ・・」には、
かなりビックリしましたが・・、でも以降は気になる誤字はありませんでした。

続く「序章」ではナチ党員の有名な丸い赤白のバッジのカラー写真と共に、
逆三角形の青ベースの「ナチ党婦人部のスカーフ用バッジ」が載っていました。
これは初めて見ましたが、「母親十字章」もそうですが、ドイツの伝統、またはナチ党に、
女性ものには「青」を使うというなんらかの理由があるんでしょうか??

本文は「鉄ヘルメット」からです。
第1次大戦までの、美しく様式化された「スパイク付きヘルメット」が1916年に近代的なものとなり、
1918年にはさらに進化(M1918)、それをベースにナチス・ドイツのM35ヘルメットが・・ということも
最初に紹介され、M40、M42と3つのモデルを写真で比較しながら、
戦局悪化とともに素材も工程も仕上げも、徐々に粗雑になっていく様子が、目で理解できます。
「がんこなハマーシュタイン」で ハマーシュタインがかぶっていたのが
「M1918」モデルだったんですねぇ。
この「鉄ヘルメット」だけで12ページ・・。これでもか・・という徹底ぶりで驚きました。


第一envented "最初の蒸気enineは"何を "年"であった

次は「制服」。タイトルである「ドイツ軍」とは、本書では「陸軍」のことを指しているわけですが、
この「制服」でも「野戦帽」から始まって、「野戦服とズボン」、「国家鷲章」、「襟章」、「肩章」、
そして襟の裏の「カラー」に「サスペンダー」と身に付ける物すべてを紹介する勢いです。
「シャツ」にしてもM33のシャツにM41のシャツと実物で・・。
こうなってくるともちろん「下着」も・・。さすがにパンツにはM40とかの規格は無いようですね。。

まだまだ「セーター」に「ハンカチ」、「手袋」、「靴下」と新品も紹介され、「オーバーコート」が登場。
「迷彩服」も詳しく紹介し、「軍靴」へ・・。
「行軍用ブーツ」ではM41モデルの裏に計44個の鋲が打たれていることを写真とともに解説します。
ドイツ軍ブーツの靴底は初めて見ましたが、最初に思ったのが、「モスクワ攻防戦」で
この鉄の鋲が打たれたブーツで、多くの兵士の足が凍傷にやられた・・というヤツでした。。

そんなことを思いながら読み進めていると、やっぱり防寒靴の「フェルト製ブーツ」が登場し、
靴底の鋲は「革」に変身・・。読んでて足元も寒かったですから、ほっとしました。

プロローグで「「軍隊暮らしにおける所持品やその使い方を・・」と書かれているとおり、
ココからはそれらのお手入れグッズとお手入れ方法を紹介します。
支給品の「靴墨」に「裁縫道具」。
この解説では「ドイツ軍は装備の維持管理規則が極めて厳格だった」として、
破れや取れたボタンのない完璧な状態に保つ責任を兵士は負っていたそうです。

次の章「ベルトとバックル」では、このドイツ陸軍のベルト・バックル(コッペルシュロス)に
書かれている言葉が、プロイセンのモットー「GOTT MIT UNS(神は我らとともにあり)」
であることに著者は、公然と聖職者の権力に反対する国家にしては驚くべきこと・・としています。
SSのバックルは有名な「忠誠こそ我が名誉」ですが、空軍も違うようです。
新しい軍だからSSと同じかも知れません。
ちなみにヒトラー・ユーゲントのバックルは「血と名誉」みたいですね。


トレンチは何を見た

次は「ガスマスク」です。
この解説ではドイツ軍のよる英国本土上陸作戦が実施されていたら、
英国は「毒ガス」を使う気だった・・という話や、ワルシャワ蜂起にドイツ軍は「毒ガス」を使用し、
すぐに世界に向かって「不幸な誤りだった」と世界に謝罪した・・ということです。
前者は初めて聞いたことですが、後者は諸説あるのでなんとも言えません。。
軍に支給されたものだけではなく、何百万という女性や子供にも支給された
「ドイツ国民ガスマスク(ディ・ドイチェ・フォルクスガスマスケ)」の新品と説明書を含めて
「ガスマスク」の章は25ページも続きます・・。
ガスマスク・マニアの方ならこれだけで購入決定でしょう。

「野戦装備」の章はまず、「水筒」からです。
「背嚢」では教範の絵と、そこに示されている規則どおりの詰め方の写真・・。
本書ではいくつか教範も紹介されてて、どんなものにも教範があるのがわかりました。。
「飯盒」も蓋がフライパンになるなど、初めて知りましたが、そういえば良く
こんなのを持ちながら食事している兵士の写真を見ますねぇ。
さらに「シャベル」に「弾薬パウチ」、「銃剣」に「近接戦用ナイフ」、「銃カバー」と続きます。

「観測、通信」の章になると、カラーペンやらペンケースやら分度器やらが・・。
「地図」では、「軍は自前の地図ばかり使っていたわけではなく、定期的に更新される
市販の道路地図も頼りにした」ということで、
ノルマンディ地方の当時の「ミシュラン・ガイド」が出てきました。
その他、「双眼鏡」に「野戦電話機」。「ホイッスル」もココに含まれます。

いよいよ「武器」の章へ。
「モーゼルKar98K 小銃」が8ページ、その後、「MP40 短機関銃」、「StG44 突撃銃」、
「MG34 機関銃」。拳銃では「ブローニングHP35」から、「ルガーP08」、
そして「ワルサーP38」を紹介。
手榴弾もドイツらしい「M24 柄付き手榴弾」から、らしくない「M39 卵型手榴弾」まで。
ここまでで、300ページ強の本書の2/3です。


これらの妖精たちが怒られ真夏の夜の夢

後半の「身のまわりの装備品」はちょっと気色が違うというか、好き嫌いは分かれるでしょうが、
万年筆などの「筆記具」から、レターセット、切手、時計と続きます。
「腕時計」では、国防軍から要求される厳格な仕様と数量にドイツの会社が応じきれなくなり、
1942年、スイスの「ロンジン」が最初に注文を受け、その後は複数のスイスのメーカーが
製造したそうですが、あらゆる交戦国からの需要が増えたために、単に刻印が違うだけで
同じモデルの時計がドイツと英国のために製造されることもあったようです。

「眼鏡」に、有名なライカを中心とした「カメラ」、「懐中電灯」に「現金」が続くと、
次の章は「文書類」です。
兵役の年齢に達した際に登録し、与えられる「ヴェーアパス(兵籍手帳)」と
動員されたときに代わりに受け取る「ゾルトブーフ(給与手帳)」を
それぞれ中のページまで詳しく紹介。
「認識票」に「射撃記録帳」、「国防軍運転免許証」も写真は1枚ではなく、
それぞれ数枚の写真があります。

ヴィトゲンシュタインの好きな「勲章と徽章」の章も出てきました。
陸軍の一般兵の生活が本書の構成の基礎になっていますから、まずは「2級鉄十字章」からです。
他には「戦功十字章」、「東部戦線従軍章」、「歩兵突撃章」、「戦傷章」、「クリミア・シールド」など。
「歩兵突撃章」の銀色は歩兵、ブロンズは自動車化部隊の兵士に・・、ほう、そうでしたか。

「健康と衛生」では、ニベア・クリームなどのメジャーなドイツの商品以外にも、
軍の公式コンドームに、国防軍専用のバージョンなるマイナーなコンドームが。。
寄生虫を駆除するパウダーでは、以前に読んだヒトラー物の本にも登場した
「モレル博士印のパウダー」が写真つきで・・。マニアックですが、コレは面白いですね。


「糧食」はスプーンとフォークが一体化した官給品に始まり、各種ナイフや肉の缶詰まで。
コカコーラとファンタの瓶の話はなかなか興味深く、
1936年のベルリン・オリンピックのスポンサーになり、ヒトラーとゲーリングも大ファンだった
コカコーラ社ですが、両国が敵対関係になると、アトランタの本社は
「敵兵に飲ませるわけにはいかない」と原液の第三帝国内への供給を中止。
この事態にドイツ法人のコカコーラ社はサッカリンを甘味料に使った果実ジュースを作り、
それが「ファンタ」になったということです。

「プロパガンダ媒体」では国民ラジオから始まりますが、驚いたのは「ダス・ライヒ」紙です。
Uボートが米国東海岸を荒らしまわった「パウケンシュラーク作戦」の紙面が載っていますが、
この記事を書いたのは、あの「Uボート」の著者、ロータル=ギュンター・ブーフハイム です。。

「音楽」ではアコーディオンやハーモニカ、「煙草」では当時の紙巻煙草にパイプとライター。
本当に日常使う品々が出てきますから、軍事に興味が無くても、
自分が普段使っている品々や商品が当時、ドイツで使われていたことを知ると
彼らを身近に感じることが出来るのではないでしょうか。

これだけの写真の量ですが、とても読みやすかった理由として、
当該写真のキャプションが必ず同じページにあるということですね。
軍事関連の写真集では、左ページの写真のキャプションが右ページにあるなんてことは
あたりまえで、場合によってはめくった次のページとか、4ページ後に・・というのがザラですから
本書のような丁寧な編集はとても良いですね。そもそも当たり前とも言えますが・・。
また、ひとつひとつのキャプションも短いながらも
例えば、「双眼鏡は、将校・下士官の階級に関係なく、分隊長に割り当てられる」などと
勉強になるのも多くありました。

まぁ、ただ値段が高いですから、購入に悩んでいる方の参考になれば幸いです・・。



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